東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2696号 判決
被控訴人がその主張の日に控訴人に対し賃料不払いを理由に右賃貸借契約解除の通知をしたことは、当事者間に争いがない。
右契約解除の通知は、賃料延滞の場合は無催告で解除できる旨の前記特約に基づくものであるところ、控訴人は右特約は信義則上違法無効のものと主張する。しかし、かかる特約条項も、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するに当り催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨の約定として、その限度において効力を肯認すべきものと解する。本件においては、前記認定事実、争いのない事実および前掲各本人尋問の結果によれば、控訴人は昭和三四年一二月三〇日賃料として金三万円を支払つたが、その後被控訴人から賃料の取立がなかつたのを奇貨として、本件賃料は控訴人において被控訴人方に持参すべき約定であつたにも拘らず、以後賃料の支払いを全くなさず、その結果昭和三一年一一月分の賃料の一部と同年一二月分以降前記契約解除の通知がなされるまで一二年余分の賃料が未払いであつたことが認められ、このように被控訴人から賃料の取立に及ばなかつた以外格別の事情の存しないのに、長期間にわたり賃料の延滞を続けていた等の事実に鑑みるときは正に催告なしに契約を解除できる合理的な場合に当ると認めるのが相当である。
(岡部 川上 大石)